エイ出版社(世田谷区玉川台2、TEL 03-3708-1781)が2月24日、第2回「ゴールデン・エレファント(GE)賞」大賞受賞作「グレイメン」と、第1回同賞特別賞受賞作「圓(まどか)さん、天下を回る」を全国の書店で発売した。
1973(昭和48)年の創立以来、主に「ファッション」「アウトドア・スポーツ」「暮らし」など「趣味」の分野の出版業、用品販売業のほか、レストランなどの食品事業を展開する同社。2009年の同賞創設をきっかけに文芸分野への進出を果たした。
「GE賞」は「日本語で書かれたエンターテインメント小説を世界に発信する」ことを目的として、「パートナーズ」と呼ばれる複数の国内企業と、米国・中国・韓国の出版社と同社が共同で創設。分野や国籍を問わない「新人賞」で、受賞作品は翻訳され海外でも出版される。運営と選考に海外出版社の編集者が携わることで、未発表作品でありながら受賞と同時に海外への出版機会を得ることができる。第1回(2010年度)は約150の応募作品の中から、中村ふみさんの「裏閻魔(うらえんま)」、荒井曜さんの「慈しむ男」が大賞に選ばれ、昨年発売。英語・韓国語・中国語版も刊行された。
同賞は作品を一つの「コンテンツ」と捉え、多角的な形態の販売を狙うのも特徴。国内での書籍発行部数が6万部の「裏閻魔」は、書籍発売前にデジタル書籍版を期間限定でPCや携帯電話などで無料配信し話題となった。現在、米国で「The Immoral:Demon in the Blood」としてコミック化され、全米約3000の書店などで販売されているほか、映画化も視野に入れているという。
第2回(2011年度)の大賞受賞作「グレイメン」の著者・石川智健さんは1985(昭和60)年生まれの26歳、医療薬品卸の会社員。神奈川県から都内への通勤時間を使い車内でも執筆したという。24日の授賞式には、同社オンラインショップ等で無料配信する「オーディオブック」で同書第1章の朗読を担当した俳優の佐野史郎さんがゲストで登場、会場を沸かせた。同書は7月に韓国、12月に米国での出版が予定されている。
第1回より同賞の選考委員を務める批評家の宇野常寛さんは「文芸界に風穴を開ける、新機軸の作品を」と同賞へ期待を寄せた。
第3回同賞の応募締め切りは5月31日。募集要項など詳細はホームページで確認できる。