二子玉川にオフィスを構えるデザイン・建築設計事務所「グラディエ」(世田谷区玉川2)が運営する地域デザインブランド「フタコラボ(futacolab)」が7月26日、新商品「コゼーセットとコースター」を発売した。
ブランド立ち上げを発表する磯村さん(昨年2月27日、『ウエルフェアトレードのある暮らし』イベント)
昨年誕生した同ブランドは、「地域で創り、地域に還(かえ)す」を理念にオリジナル商品を開発するプロジェクト。同ブランドロゴを制作し同プロジェクトの全体運営とブランディングを統括するグラディエ社長の磯村歩さんは北欧福祉の研究でデンマークに留学経験があり、これまでにもユニバーサルデザインやサスティナブルデザイン、街づくりを視野に入れたモビリティーの地域活用に関連した研究や事業を数多く手掛けている。
同プロジェクト立ち上げのきっかけは、2011年に二子玉川ライズのガレリアで開催された世田谷区と目黒区の障害者施設による「障害者フェスタ」。「以前から地域に関連したことをしたい」と考えていた磯村さんが、同イベントで販売されていた自主製品に「製品が持つポテンシャルに対してのデザインの余地」を感じ、自ら連絡を取ったという。
その後、昨年2月に二子玉川カタリストBAでワークショップ「ウエルフェアトレードのある暮らし」を開催。デザイナー、介護施設経営者、NPO関係者、研究者、介護福祉士、学生、福祉作業所職員など約40人が集まり、福祉作業所とコラボしたデザイン事例を紹介したり製品デザインのワークショップを開いたりした。その際、同地域ブランドの立ち上げを公表した磯村さん。「地域資産を活用し、地域の福祉作業所やクリエーターと一緒に、地域の方々に支持される『地産地消』のものづくりをしていきたい。こうした活動が小さくとも地域の物語となり、やがて街の魅力につながる」と明かした。
昨年12月に同地域ブランド第1弾「物語その1 焼き菓子」の発売にこぎ着け、その後「物語その2 双子のモカブラウニー」に続き、7月には「物語その3 コゼーセット」を誕生させた。いずれも世田谷福祉作業所(下馬2)や烏山福祉作業所(北烏山1)と地域の店、デザイナーのコラボレーションによるオリジナル商品。各商品に付けた商品説明カードには商品開発の「物語」を記しており、同紙の製造も作業所が請け負う。同プロジェクトにおける作業員の工賃は従来比(東京都推進基準)の3割増を実現しているという。
今回の新商品は、織り機を有し、スウェーデン刺しゅうや裂き布織りの技術を持つ同作業所所員の技術を踏まえて開発。デザイナーの片山典子さんがデザインした2種類のオリジナルデザインで「洋食器にも和食器にもガラステーブルにも似合うようシックにまとめた」。
磯村さんは、今後の事業の持続維持を考え、「受注製造以外にも定期的な流通を実現することを考えたい。例えば『富山の置き薬』ならぬ『フタコの置きお菓子』など、さまざまな地域の企業や団体の協力を得てスキームを組んでいきたい」と前向きな姿勢を見せる。
価格は、コゼーセット=4,800円、コースターセット=1,000円。