約1年半の間休館していた「静嘉堂文庫美術館」(世田谷区岡本2)は10月31日、リニューアルオープンし「金銀の系譜―宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界」展を開く。
俵屋宗達「源氏物語関屋・澪標図屏風」前に立つ佐々木幹夫理事長、河野元昭館長
三菱創業者として知られる岩崎彌太郎の弟で、第2代の社長を務めた岩崎彌之助と、その息子で第4代社長の岩崎小彌太の父子2代にわたる収集品を収蔵・展示する同館。所蔵品は国宝7件、重要文化財83件を含む和漢の古典籍およそ20万冊と東洋古美術品約6500件からなる。
2014年春から約1年半をかけ、空調・防火・照明・防犯などの施設内設備を中心とした大幅な改修と、展示品の修繕を目的に休館していた同館。再開の今年が「琳派」400年の節目に当たることから、リニューアル展の第1弾は、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一らを代表とする同派の名品を中心に、同時代の書画・工芸作品40点を展示する(一部展示物は前期・後期で入れ替えあり)。
10月29日に開かれたプレス向け内覧会で、公益財団法人静嘉堂理事長の佐々木幹夫さんは「保存環境と展示環境が整備され、リニューアルオープンを迎えることができた。多くの人に展示公開を楽しんでもらいながら、良い作品を後世に残すという美術館としての2つの役割をこれからも果たしていきたい」とあいさつ。10月1日付で新館長に就任した河野元昭さんは、同展の見どころに約10年ぶりの公開となる国宝・俵屋宗達「源氏物語関連・澪標図屏風(みおつくしずびょうぶ)」を挙げた。3年かけて行われた同品の修理作業により、「宗達が描いた当時のように美しくなった。ぜひ多くの方に堪能してほしい」と話した。
同じく修理後初公開する重要文化財・尾形光琳「住之江蒔絵硯箱(すみのえまきえすずりばこ)」(展示期間=11月25日~12月23日)も今回の見どころ。光琳自筆の箱書きから、光琳が私淑する本阿弥光悦作の硯箱を模して制作したものと知られる同作品。「光悦の特色をよく受け継ぎながらも独自の創意を加えた光琳蒔絵の頂点を示す名作」といわれる。制作から300年を経て鉛板の劣化が進んだため、今回、表面部分のさびの除去と腐食防止を目的とした修理を行った。
ほかに、同館ラウンジでは全期間を通して同館所蔵の国宝「曜変天目(稲葉天目)」、重要文化財「油滴天目」も展示する。漆黒の表面・釉(うわぐすり)に大小の斑文が集まり、その周りを藍と青、光の角度によっては虹色にも見える光彩が輝く「曜変」は、12~13世紀の中国南宋(なんそう)時代の福建省建窯(けんよう)の焼成品で、完形品の現存は世界で日本国内にある3わんのみ(京都・大徳寺龍光院、大阪・藤田美術館)。同館の茶わんが「最も星紋が鮮やか」という。
関連イベントとして、河野館長による講演会「これであなたも琳派通!」(11月21日)、担当学芸員による「列品解説」(同5日、14日、12月3日、19日)を実施する。
同リニューアルオープン展の第2弾には「茶の湯の美、煎茶の美」(2016年1月23日~3月21日)、第3弾には「よみがえる仏の美~修理完成披露によせて~」(同4月23日~6月5日)を予定する。
開館時間は10時~16時30分(入館は16時まで)。月曜休館(11月23日は開館、翌日休館)。入場料は、一般=1,000円、高校生・大学生=700円、中学生以下無料。12月23日まで。