静嘉堂文庫美術館(世田谷区岡本2、TEL 03-3700-0007)で1月22日より、「受け継がれる東洋の至宝part? 曜変・油滴天目 茶道具名品展」が開催されている。
同展は静嘉堂文庫創設120周年・美術館開館20周年を記念して企画された特別展第3弾。三菱第2代社長の岩崎彌之助と第4代社長の岩崎小彌太の父子2代で設立した同館に収蔵された約6500点の東洋古美術品のうち、茶道具は約1400点。同展ではその中から「名品」約100点を展示する。
今回、特に「見どころ」として注目を集めているのが、元将軍家所蔵であったものを淀藩主稲葉家が拝領し代々秘蔵した国宝の唐物茶わん「曜変天目」。1934(昭和9)年に小彌太が購入した。漆黒の表面・釉(うわぐすり)に大小の斑文が集まり、その周りを藍と青、光の角度によっては虹色にも見える光彩が輝く「曜変」は、12世紀~13世紀の中国南宋(なんそう)時代の福建省建窯(けんよう)の焼成品。完形品の現存は世界に3わんのみ(ほかに京都・大徳寺龍光院、大阪・藤田美術館)だが、昨年5月、南宋王朝の都の地であった淅江省杭州で2009年に同わんの陶片(全体の4分の3ほど)が出土したと公表されたことから、同わんに対し国内外で大きな注目が集まっている。同館所蔵の曜変の斑文が星雲のように各所でまとまっているのに対し、同陶片では斑文が中央から上方へ向かうように現れているという。
小彌太が「名器を私に用うべからず」として生前一度も使用することがなかったという同わんは、同館の名品の中でも「まさに至宝というべき作品」(同美術館)。今回、同わんの展示にはLumiotec社(山形県米沢市)の照明用有機ELパネル(エレクトロ・ルミネッセンス)を使用。同照明は白熱電球や蛍光灯、発光ダイオード(LED)に比べ、薄く軽量で場所を選ばず設置がしやすく、発熱が少なく、光に紫外線や赤外線を含まないため照らされたものを傷めないなどの特徴がある。同美術館は「展示物の繊細な色の適正な再現に効果があるため採用した」と話し、そのほか「油滴天目」、野々村仁清「色絵吉野山図 茶壺」、井戸茶わん「越後」、井戸茶わん「金地院」の展示にも使用している。
同館によると初日から2月3日までの入館者数は約3600人を数え、一日平均は約300人。「通常の展覧会よりかなり良い出足となっており、特に土日はにぎわっている」とし、同展への関心の高さがうかがえる。
開館時間は10時~16時30分(入場は16時まで)。月曜休館(祝日の場合は開館、翌火曜休館)。入場料は、一般=800円、高校生・大学生=500円、中学生以下無料。3月24日まで。