世田谷美術館分館「向井潤吉アトリエ館」(世田谷区弦巻2、TEL 03-5450-9581)で8月10日、「開館20周年記念・向井潤吉と四季‐秋」展が始まった。
今年7月10日に20周年を迎えた同館は、京都生まれで名誉世田谷区民でもあった画家・向井潤吉(1901-1995)の自宅兼アトリエを美術館として改装したもの。1993年に敷地と所蔵の油彩作品、素描作品などとともに世田谷区へ寄贈され開館した。
向井潤吉が同所に居を構えたのは80年前の1933(昭和8)年で、戦争や不審火による火災などの困難を乗り越え、佐藤秀三設計により1962(昭和37)年に現在の建物を再建した。1969(昭和44)年には岩手県一関より土蔵が移築され、同館の原型を成した。生前家族とともに生活し、創作活動をした同館の庭園には、クヌギ、コナラ、ケヤキなど武蔵野の雑木林の面影を今に残し、日本各地を旅してかやぶき屋根の民家を描き続けた向井潤吉の生活観と美学が深く浸透する。
「画家の息吹を肌で感じながら多くの作品を鑑賞できる珍しい個人記念館」と話すのは、せたがや文化財団学芸部美術担当課長の矢野進さん。同館の平均年間来館者数は約8000人。
同展は、民家を描いた代表作品を中心に取り上げ、「季節の移り変わりとともに描かれた美しい日本の四季を楽しんでもらう趣向」。今回は「春/夏」(4月2日~7月28日)に続く第2期展となる。制作日誌の記録によると、10月から12月の「秋」は向井潤吉が最も制作に励んだ季節の一つ。同館所蔵の約800点の中から「秋酣(しゅうかん)」(福島県南会津郡南郷村、1973年)、「奥多摩の秋」(東京都西多摩郡奥多摩町、1975年)、「古壁の秋」(奈良県奈良市高畑町福井、1971年)など、秋をテーマとした作品約40点(油彩作品20点、水彩・素描作品20点)で構成する。
小企画として開く「向井潤吉と手仕事」コーナーでは、若き日に高島屋呉服店図案部に籍を置いていた向井潤吉がデザインを手掛けた、着物の帯や書籍の装丁(「武器よさらば」新潮文庫ほか)、雑誌「週刊朝日」の表紙画や挿絵などの仕事を展示している。10月12日には「開館20周年ギャラリートーク」を開き、開館のエピソードや向井潤吉の功績などについて当時の世田谷区文化事業担当者が披露する。
開館時間は10時~18時(入場は終了の30分前まで)。月曜休館(祝休日の場合は翌火曜休館)。観覧料は、一般=200円、高校生・大学生=150円、65歳以上と小中学生=100円。12月1日まで。