世田谷・祖師谷在住の茶人・近藤俊太郎さんが主催する「茶団法人アバンギャルド茶会」は9月14日、かねてより開発を進めていた移動式茶室車「丿庵(へちあん)」のお披露目を行った。
同会は、IT系企業に勤める近藤俊太郎さん(34)が「現代の人たちが気軽に楽しめる茶の湯の機会を提供したい」と2009年11月に立ち上げた。主に週末を使い日本全国で茶道に関するさまざまな活動を展開する。同会では「楽しく茶道を体験するためのプロジェクト」として、宇宙と茶道具のコラボレーション茶会「宇宙十職」、自分好みの茶道具を作る「アバ茶好みプロジェクト」、20~30代を主な対象とした「はじめての茶道教室」など、複数の企画が同時進行中。
今回、群馬県中之条町で開催中の「中之条ビエンナーレ」(9月13日~10月14日)で「デビュー」を飾った移動式茶室車(別名=茶ンピングカー)「丿庵(へちあん)」も、近藤さんが今年5月から進めてきた同会プロジェクトの一つ。
発案のきっかけは、近藤さんがゴールデンウイーク中に岡山県備前市で出合った「リヤカー茶室」。「リヤカー上でお点前をするよりも、むしろ『茶室』自体を自動車の荷室に積載すればもっと行動範囲が広がる」と考えた近藤さん。早速実現に向けて行動を開始し、同月末には広い荷室スペースをフラットに利用できる軽自動車「ホンダ バモスホビオ」を購入。6月から茶室の内装の改造を重ねたという。
四方を和風の壁で囲った広さ約1.5畳の同茶室は出し入れが可能。車体後部(ハッチ)に設けたにじり口から出入りする造りで、最大収容人数は2人。同プロジェクト発案時から「面白がって」賛同してくれた和空間スタイリストで畳職人の大久保文之さん、鯨井工務店らパートナーの理解と協力を得て、うろこ状に木を張った天井など、日本の伝統的建築技法を駆使した「本格的」な茶室に仕上がった。庵内随所に「扁額」(看板)や「iPad映像掛け軸」などを置き、研究者や書家、陶芸家、アーティストによるさまざまな技術と感性が結集し「空間が作品」(近藤さん)に。同茶室制作の材料費は約5万円だが、「パトロン制度」と呼ぶ個人や法人による「応援金」や実物提供で賄ったという。
「趣味の世界で徹底して真剣に制作しているからこそ、茶道に親しんだことのない若い世代の感性へも訴えかけるものがあるはず」と近藤さん。最近は海外のイベントからの招待が多いと話し、「日本文化を世界に発信して、その評価が巡り巡って最終的に日本人がその良さを実感することにつなげたい」と将来への展望を明かす。
今後の同茶室車出動イベントについては同会ホームページで発表していく。