禅宗寺院を中心に発達した禅宗美術を展示する「秋の優品展-禅宗の美術と学芸-」が8月25日から、五島美術館(世田谷区上野毛3)で開催されている。
東京急行電鉄の初代会長・五島慶太が半生をかけて収集した古写経をはじめとする日本・東洋の古美術品を収蔵・展示する同館。国宝5点、重要文化財50点を含む美術品約5000点を収蔵する。約6000坪の敷地には吉田五十八(よしだいそや)設計の本館、庭園と散策路、明治時代に建てられた茶室「古経楼」(こきょうろう)や立礼席「冨士見亭」などがある。
同展では収蔵品のコレクションから、中世の文化に大きな影響を与え日本人の美意識を深化させたといわれる、鎌倉・室町時代の禅宗美術を中心に約40点の書画や高僧の墨跡、五山版と呼ばれる出版物などを展示する。
主な展示物は、鎌倉・建長寺の開山、蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)の書「蘭渓道隆墨跡『風蘭』偈(ふうらん げ)」をはじめ、頓知話でよく知られる京都・大徳寺の禅僧一休宗純が、修行の厳しさを故事にならい弟子に与えた偈(げ)「一休宗純墨跡 偈頌(げじゅ)」、最上部に戦国時代の武将足利晴氏が雪嶺斎(せつれいさい)の題字と花押を書し、その下に鎌倉・建長寺の3人の僧による詩賛を伴う書斎図である重要美術品「雪嶺斎図 僊可筆 麟仲祖祥他賛(せつれいさいず せんかひつ りんちゅうそしょうほかさん)」、中国唐時代の文学者柳宗元(りゅうそうげん)の作品に多くの注釈を付け出版した文集「新刊五百家註音辯唐柳先生文集(しんかんごひゃくかちゅうおんべんとうりゅうせんせいぶんしゅう)(五山版)」など。
特集展示として、桃山時代の古備前焼、美濃焼を中心に、重要文化財で伊賀焼の籠形(かごがた)水指「古伊賀水指 銘 破袋(こいがみずさし めい やぶれぶくろ)」をはじめ、今回初公開となる濱田庄司作の「柿釉(かきゆう)面取花瓶」、「掛分釉指描大鉢」など、日本陶磁22点を同時公開。
10月6日~14日には、「源氏物語」の著者紫式部が書いた日記を絵巻にしたもので、1008(寛弘5)年11月1日の皇子誕生50日目の祝いの日の様子(現在のお食い初めの儀式)が描かれた同館所蔵の国宝「紫式部日記絵巻 五島本」も展示される。
期間中の「ギャラリートーク」は、「禅僧と室町絵画」(9月5日)、「中国の墨跡」(同13日)、「禅宗と出版物」(同27日)、「日本の墨跡」(10月4日)、「紫式部日記絵巻について」(同11日・14日)開催時間は、各日14時~15時ごろ(開場・受け付けは13時30分~)。当日入館者聴講無料、椅子席100人(先着順)。
「こども美術講座」は、「王朝絵巻の世界」(10月8日)。開催時間は、14時~15時ごろ(開場・受け付けは13時30分~)。小中学生対象、当日入館者聴講無料、椅子席15人(先着順)。
学芸課長の砂澤祐子さんは「『禅宗の美術』は難しく感じるかもしれないが、西洋絵画だけではなく、書や出版物、工芸品なども美術の一つのジャンルであることを紹介していきたい。日本美術の思想的な部分やこういう文化があったことを知っていただくきっかけになれば」と話す。
開館時間は10時~17時(入館受け付けは30分前まで)。月曜休館(9月17日・24日、10月8日は開館、翌日休館)。入館料は、一般=1,000円、高・大学生=700円、中学生以下無料。10月14日まで。