世田谷・桜新町の「長谷川町子美術館」(世田谷区桜新町1)で9月8日から、収蔵コレクション展「秋の贈り物」が開催されている。
「サザエさん」の漫画作家として知られる長谷川町子(1920-1992)が姉の毬子と共に収集した美術品を広く社会に還元しようとの思いから、1985(昭和60)年11月3日に「長谷川美術館」として開館した同館。収蔵品は日本画・洋画・ガラス・陶芸・彫塑など多岐にわたる。1992年、町子没後は、館名を現在の「長谷川町子美術館」と改め、作品の収集・展示を続け、年に数回収蔵コレクション展を開催。町子コーナーでは、町子が描いた「サザエさん」「いじわるばあさん」「エプロンおばさん」などの原画や、町子が手掛けた陶芸や水彩などの作品も展示している。
今回の展示では、長谷川町子と姉の毬子のコレクションの中から、日本の四季の美しさを「秋」にスポットを当てて紹介する。秋の自然や風景を題材とした川島睦郎「葉の落ちて」、田渕俊夫「夕陽」、奥田元宋「秋陽」、佐々木裕而「山霧秋晨」、渡辺信喜「葉鶏頭」、手塚雄二「萬月」、牧進「喜久」などの作品を中心に、秋の彩りにあふれた35作品を展示。
2階の町子コーナーでは、長谷川町子の原作展「磯野家の食卓」も同時開催。「サザエさん」を通して食生活の変化と磯野家の食にまつわる情景を紹介する。終戦翌年から約28年間、新聞紙面で連載された「サザエさん」では、「食」を取り巻く環境も大きく変化した。配給や代用食、自給生活などが描かれた戦後間もない食糧難の時代から始まり、パン食などの食の欧米化が進み食生活が豊かになった高度経済成長時代、外食がさかんになりインスタント食品や冷凍食品などの手軽な食品が登場する時代になると、食品添加物など食の安全についても描かれているという。
学芸員で広報の相澤弘子さんは「長谷川町子と姉の毬子が好きで集めた美術品の中から、『秋』をテーマに皆さまに見ていただきたい作品を選んで展示した。芸術の秋に、漫画と芸術作品両方に触れられる良い機会なので、楽しんで見ていただければ」と話す。
開館時間は10時~17時30分(入館は17時まで)。月曜休館。入場料は、一般=600円、高校生・大学生=500円、小学生・中学生=400円。駐車場は3台分を用意。11月25日まで。