首都高速道路用賀出入り口近くのビルに馬房を置く「世田谷乗馬倶楽部」(世田谷区上用賀5)で飼育するポニーの月子は、今春の繁殖シーズンに合わせ「婚活」のため青森へ帰郷する。それに伴い、同乗馬倶楽部は閉場される。
同乗馬倶楽部を運営するのは建築会社「東京組」(用賀4)。青森県十和田市出身の中野渡利八郎社長が「自然の少ない世田谷で動物に触れ合う機会を」と、社会貢献活動の一環として2009年に創設。馬房を同社が所有するシェアオフィス「ショートケーキビル」(用賀5)内に、馬場を同区鎌田3丁目に置き、2011年より子どもを中心とした一般向けの乗馬レッスンのほか、「日帰り乗馬ツアー」を行ったり区内のイベントなどへ参加したりしてきた。
同乗馬倶楽部で飼育するのはポニー2頭、月子(雌・8歳)とりんご(雄・13歳)。2頭とも中野渡社長の兄である利彦さんが運営する青森県十和田市にある馬の動物園「十和田乗馬倶楽部」で生まれた、「ハフリンガー」種と「道産子」種のミックス。
2013年には用賀の馬房から環八通りを単身で渡り、砧公園で悠々と遊牧しているところを発見された「武勇伝」を持つ月子。人間の年齢で換算すると現在32歳で「お年頃」と、責任者で調教師の蓮見みなみさん。今春の馬の繁殖シーズンを迎えるに当たり、故郷の十和田で「お見合い」をして子馬を産むことに決まった理由について、「お母さんになった馬は、性格が穏やかになり、より乗馬としての良さが出てくる」と明かす。妊娠期間は約1年で、「皆さまの前にまた姿をお見せできるのは2年後ぐらい」。りんごも月子と一緒に十和田乗馬倶楽部へ帰郷する。
同乗馬倶楽部は、これを機にいったん閉める。借地だった馬場は近々引き払い、馬房のあるビルも片付けが進む。蓮見さん自身も、2月から家族の転勤に伴い北海道へ引っ越しをするため同社を退職するといい、「年齢も近い月子との生涯の縁を感じる」と感慨深げ。
今後の再開については未定だが、「これまでの5年間、年間約300人の子どもたちに乗馬を楽しんでもらえたことを何より感謝している」と蓮見さん。十和田での再会イベント開催などの「機会を作りたい」と話す。
帰郷前の月子とりんごに触れ合えるイベントを1月25日に開く。場所は青山学院大学体育会馬術部の厩舎(町田市)で、乗馬することはできないが餌を与えたり自由に写真を撮ったりすることができる。
イベントの開催は13時~15時。参加無料。